マイナーな話題ですが、客車列車時代から脈々と続いていた、勝浦をきわめて早い時刻に発車する千葉行き。現行では勝浦4:25発 千葉5:43着の220Mで、209系6連で運転されています。
朝一番の上りでは、千葉に近い駅が始発の列車ほど早く千葉に到着するのがふつう。木更津や成田や(あれば)茂原など。しかし、この勝浦発220Mは勝浦始発と遠方なのに、木更津始発の120Mと4分しか違わない5:43に千葉に到着します。成田始発と比較しても14分しかちがわない時刻。
それもそのはず、この220Mはかつての行商列車の血統を受け継いでいるのです。
S44(1969)年 222レ 勝浦3:58発→6:07千葉着→6:57両国着 (両国まで客車)
S46. 7.1 改正 230D 勝浦4:05発→5:51千葉着 (房総東線気動車)
S48.10.1 改正 222M 勝浦4:19発→5:49千葉着 (一周電化完成 113系or72系)
S53.10.2 改正 222M 勝浦4:14発→5:50千葉着 (急行外房の時代 113系)
S61. 3.3 改正 222M 勝浦4:20発→5:48千葉着 (国鉄末期 113系)
S62.5.26訂補 222M 勝浦4:20発→5:48千葉着 (JR転換 113系)
H28.3.25まで 220M 勝浦4:25発→5:43千葉着 (現行 209系)
実際に行商のおばあさんが多く利用していたのは昭和50年代後半か60年代前半くらいまでだったかもしれません。
かつてJR化成ったばかりのころ、私は成田線の上り一番列車 103系の上野行(下総松崎4:53発)に下総松崎から乗車したことがありました。先頭車に乗って線見しながら・・・と思っていたら、乗車前にホームで、「そのあたりは行商のおばちゃんたちが乗りますよ」と毎日通勤で乗っているらしいサラリーマン氏に声をかけられました。
かまわず乗ると、あたりは行商のおばあさんたちばかり。通勤者も全くいないことはないのですが、他の団体にまぎれこんだようなちょっとばつの悪い思いで乗っていた思い出があります。上り方2両くらいが割り当てられているようでした。
もっと前の時代には「行商専用車」というサボをかかげて客車1~2両が貸切のように使用されていた時代もあったようです。これは見たことはありませんが。
このような車両は総武本線、成田線、京成電鉄にも上り初電あたりを中心に設定されていたようです。
多くの「かつぎや」のおばあさんたちは、野菜や魚や干物や花や自家製の漬物などをわんさかと風呂敷に詰め、あるいはブリキのかんかんに満載し、またある人はかんかんを3個ほどショイコに背負って、船橋・市川・東葛飾・葛飾など下町方面の個々のおなじみのお客さんの家々をまわってゆきました。車内では物々交換もされていたようで、空いているうちに103系の床に商品を広げて交換しているのを成田線で見ていた記憶があります。当時スナップ写真を撮ろうなどとは考えもしませんでした。
車両はおおむねロングシート車のほうが好まれているようでした。背中の荷が大きいからです。座席に座るときは、先に背中から荷物をしょったまま座席に降ろし、その後に肩のベルトをはずしてサイドに自分がちょこんと座る、という方式でした。昔の客車の狭い通路では座席に到達するまでが大変だっただろうと思われます。
外房線の勝浦発一番列車は かつて2回利用したことがあります。早く千葉へ出るのに クルマを置く都合で、1回は御宿から、1回は浪花からそれぞれ千葉まで。113系のころですが、いつのときだったか千葉駅では4番線に到着し、接続する総武緩行の101系か103系かが同じホームの反対側3番線で待っていたことがあり、こんな配慮が荷の大きなおばあさんたちにはきわめて親切でした。快速よりも、どこでも降りれる各停のほうが使いやすかったようです。
のちに、S60年過ぎだったかと思いますが、以前に千葉駅では同じホーム反対側で待っていた総武緩行は(合理化だかで)2番線発車に変わってしまって、階段を思い荷物をしょって上り降りするおばあさんたちが気の毒に思えてならなかった記憶があります。そのころには徐々にかつぎやさん達は減っていったように思います。
そんな長い歴史のある、勝浦4時台前半に出る一番列車。とうとう大原発にスジをゆずって勝浦~大原間が廃止されます。勝浦発一番は4:55発222Mと30分遅くなり、他駅のふつうの初発列車と変わらない時間帯となります。
無くなるまで3日となった今日3月23日(水)、勝浦駅へ4:10ごろに行ってみました。suica で入場したものの、改札に駅員は見当たりません。
2016.3.23 勝浦駅改札を入ったところの表示。この 4:25を見たかった!
3月23日は220MはC605でした。3/4ドア閉で客待ち中
鳥居の部分、穴があいているように錯覚しますが、フツーの階段です
乗客は勝浦からは1~2人かな?と思っていたら、発車時には全部で7~8人はいました。意外。が、前寄り1~2両目のみで、それより後ろは無人。
4:25 220M、3番線から発車。この時には次発の運転士氏がもう出てきました。
かつての行商列車、といっても見れば今ではその面影など全くありません。この時刻とバックグランドの歴史を知らない大多数の乗客にとっては・・・。
1番線には7:26発 54Mわかしお4号 が前夜からマルヨ。
側線には224M(5:15発)、232M(5:53発)、2234M~通快2784A(6:08発)、242M(6:52発)が停泊。
満月をわずかに過ぎた月がこうこうと輝く (今日は旧暦2月15日)
改正ダイヤのポケット時刻表(上総一ノ宮以南版)が配られていました。勝浦発一番は222Mの4:55発となっています。